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『“東洋の神秘”ザ・グレート・カブキ自伝』で知る昭和プロレス

ザ・グレート・カブキ

『“東洋の神秘”ザ・グレート・カブキ自伝』(ザ・グレート・カブキ著、辰巳出版)。昭和プロレスファンの方々はすでに読まれたと思いますが、米良明久時代→高千穂明久→ザ・グレート・カブキ時代と、50年にわたるプロレス生活を振り返っている書籍です。今回は、昭和プロレスの述懐で興味深い件があったので、書き留めておこうと思います。





著者の米良明久は少年時代、力道山に憧れ、また母ひとり子一人で働かなければならなかったので、中学を出ると日本プロレスに入門志願。

たまたま力道山は巡業でいなかったので出直すことにしましたが、その間に力道山は急死。

プロレス入りがダメになると不安になった米良明久は、また上京して、豊登道春に入門許可をもらいます。

その後の道場でのシゴキがリアルに書かれます。

松岡巌鉄のイジメが「えげつない」ことが書かれています。

そして、グレート小鹿と山本小鉄、松岡巌鉄と大熊元司は合わないので、その組合わせはガチンコの試合になった。

星野勘太郎は巧かった。

魁勝司(北沢幹之)、ミツ・ヒライは、試合運びや技のかけ方など、自分にとって勉強になった等々、当時のレスラーの実名が書かれているのが興味深い。

その後、新弟子がリストラされることになったものの、挨拶に行ったら、芳の里が初めて会った米良明久の年齢を聞いて引き止めてくれ、かつすでにもらっていた退職金5万円まで返さなくてよかったと書かれています。

その上、芳の里は高千穂明久というリングネームまでつけてくれたとか。

しかし、当時芳の里は副社長。

それが、リストラされるまで新弟子の顔も知らず、しかも退職金もあげてしまうというどんぶり勘定。

人間的には悪い人ではなかったのでしょうが、ダラ幹との揶揄もむべなるかなという感じもします。

ただ、ここでリストラされていたら、のちのカブキは誕生しておらず、高千穂明久は、芳の里、豊登、吉村道明の付け人を兼務しながら、芳の里派を自認します。

そして、ジャイアント馬場、アントニオ猪木、大木金太郎の三羽烏の中では、ジャイアント馬場が一番話しやすかったといいます。

アントニオ猪木についても、悪いことは書かれていません。

レスラーとしてのジャイアント馬場については、カブキは絶賛する一人です。

レスラーとして認め、人間的にも合ったのに、後に全日本プロレスを退団することになったのはどうしてでしょうか。

経営者としてのジャイアント馬場と合わなかったのか、馬場元子さんと合わなかったのか、それとも当時の日本テレビから出向してきた松根社長と合わなかったのか、カブキははっきりとは書きませんが、文中にその3つめを示唆するくだりがあります。

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豊登退団の新証言


そして、私が興味深かったのは、豊登退団について、これまでとは違う証言を行っていることです。

豊登が会社の金を2000万円使い込んで、日本プロレスの社長を更迭され退団した、といわれていますが、「出回っている話のすべてが事実というわけではない」とカブキは書いています。

結論から書くと、遠藤幸吉が豊登を追放するために、豊登を悪役にしたというのです。

「遠藤さんは、煮ても焼いても食えない」とこきおろし、会社の金が消えることがあったが、それは遠藤幸吉ではないのかと疑っています。

その後も遠藤幸吉は、吉原功を追い出し、トルコらとNET派としてアントニオ猪木を担いで日本プロレス内をジャイアント馬場と対立させたり、考えてみれば波風ばかり立てていました。

もっとも、アントニオ猪木が除名されると、テレビ放送ではアントニオ猪木を批判し、それでいて、坂口征二が合流後に始まった、新日本プロレスの中継では、ちゃっかり解説者になっているなど、まあ世渡り上手なのかもしれません。

その他、「プロレス団体はトップ選手に食わせてもらっているという意識を持つこと」「義理が大切である」「自分のポジションをわきまえろ」「自分がやりたいことがあったら入り口のハードルを高くするな」など、私たちが生きていく上で教訓となることも書かれています。

昭和プロレスのマニアには、こたえられない内容です。

“東洋の神秘

“東洋の神秘"ザ・グレート・カブキ自伝 (G SPIRITS BOOK)

  • 作者: ザ・グレート・カブキ
  • 出版社/メーカー: 辰巳出版
  • 発売日: 2014/10/29
  • メディア: 単行本

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いらっしゃいませキムドク

いつもながら素晴らしい文章。感服いたします。
これからも、応援します。感謝。
by いらっしゃいませキムドク (2016-09-18 20:46) 

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